2017年06月13日

竹群の掛け軸に想う❗




宿の『淡竹』(からたけ)の客室の掛け軸を
紹介させてもらいます。





水墨画の絵と書の組み合わせの掛け軸です。

絵は竹群から流れ出る清い水を描いたもの。

書は、『水自竹群流出冷』
水は、竹群より流出して冷やかなり

京都 天龍寺派
関 牧翁 老師書

書の意味は、群生する竹むらから流れて
くる水は、清らかで見るからに冷たそう
である。水は、通過する境地によって
自ら清浄となる。
人もその環境と進むべき道とを心して
選ばねばならぬという意味合いです。



淡竹(からたけ)の部屋からは、
淡竹の群生が見えます…

この竹群の景色と竹群を流れる清水の書を
前に、わずらわしい俗社会から少しだけ離れ、
自分の心と向き合える静かな時間を、
過ごして頂ければと『しつらえ』に…

私も、進むべき道とその回りの環境を
心して選んでゆかねば思います。

人を大切にする気持ちを温めて、
お互いに人を想う気持ちが響き
合い、絆を深めながら
竹群生を流れる清水のごとく
心を段々と清らかにして
ゆければと考えます。

清らかな心が、お客様のお気持ちを
察することが出来るのではないかと…

清らかな心が、食材の声を聞くことが出来、
食材の持ち味を生かすことが出来るような
気がしています。


九代目


  


Posted by 九代目 at 19:17Comments(0)しつらえ

2017年06月08日

名脇役の新玉ねぎ❗

6月になると自家農園の有機栽培の
葉玉葱が、旬を迎えます。
玉ねぎの葉っぱの部分と軸の部分
もちろん根の新玉ねぎ全部が、食べれます。

新玉ねぎの部分は、水と酒少々と塩とで
じっくり柔らかくした玉ねぎの酒蒸しと
スライスものと葉っぱの部分と軸の
部分それぞれ持ち味が生きるように
下処理を施します。




宿では、6月末の菜っぱが枯れるまえに
牛肉と合わせた献立である
『葉玉葱と短角牛のすきやき』が
献立に登場します。




牛肉と玉ねぎは、出会いもので、
牛肉のくせを玉ねぎの風味が消してくれ
牛の旨味をとことんと引き立ててくれます。

玉ねぎ自体も牛の旨味たっぷりの
スープを吸って、お互いに引き立ちます。

食材同士を組合せた時に、引き立て
合うことを日本料理の世界では、
『出会いもの』と呼びます。

牛肉と玉ねぎが、まさに、出会いものです。

想像してください。
牛丼には必ず玉ねぎが入っていて、
お互いを引き立てあうのが、分かるでしょうか?

玉ねぎと牛肉が、二種類の食材同士が
織り成す『料理の妙』なのです!

そこに、豆腐や椎茸などの数種類の食材が、
入ると味気が変わり、牛丼の味わいではなく、
すきやきの味わいになっていきます。

玉ねぎは、じっくり炊いていくと玉ねぎの
甘みが、ダイレクトにスープに出て
美味しいものです。

牛丼でも、肉じゃがでも、玉ねぎが
名脇役です!

旬の新玉ねぎからでる甘みを生かすために、
すきやきの割下の砂糖は、極力少なくします。

鮮度が良い旬の食材には、そのもの自体に
奥深い甘みが、有るから…

それを生かすためには、砂糖、みりんの
甘みを減らすことで、本来の玉ねぎの甘みが
生きるという理屈です!



すきやきの割下は、天然昆布と鰹節をたっぷり
と使った『命のだし』に醤油、日本酒に
味醂と砂糖がほんの少々です。

シンプルに新玉ねぎと牛肉の相性の良さを
生かすために、余計な食材をあえて入れません。

ですから、宿では、葉玉ねぎと牛肉のみの
すきやきと言う訳なんです。

料理を構築していくときに、食材同士の
相性を、とことん探求することが、
料理人の楽しみでもあります。 

新玉ねぎは、料理において主役の
持ち味を引き立てます。

新玉ねぎは、料理においての
名脇役ではないでしょうか……


九代目

  


Posted by 九代目 at 02:10Comments(0)出合いもの

2017年06月01日

青葉薫る相名目(あいなめ)❗

晩春から初夏にかけて旬を迎える
アイナメを紹介します。

アイナメは、作り、椀物、
焼き物、揚物と多様な料理法に
出来る美味しい魚で、大変重宝します。



しかし、私が、心を惹かれるのは、春から
夏にかけて餌を食べはじめた初夏の
アイナメです。



写真のように、初夏のアイナメは、
身に、うっすらと脂がのり
とても上品な甘みが増して
身がふっくらして
とても美味しいのです。

特に、七ヶ浜や唐桑半島などの岩場に
生息している黄金色に輝くオスの
アイナメが上物です!

夏を過ぎると、餌をたっぷりと食べるので
脂が乗りすぎて、少しクセが出で来てしまいます。
お作りやお椀物には、段々と合わなく
なるような気がします。
(焼き物、揚げ物には、適しますが…)

初夏のアイナメの味わいは、
初夏の里山の青葉の薫りを感じます。

海の魚なのに、何故か味わいが
若草や山菜の青葉の香りを感じます。


(お椀に、打ち水をして涼しげに演出!)



『相名目と蕗と山独活の共汁仕立て』

宿では、アイナメの脂が乗りすぎて
いない上品な内に6月頃に、懐石の
椀盛の献立に登場致します。

山独活と山蕗の香りと初夏アイナメの
青い薫りが、とても相性が良いと
感じます。
吸い口には、木の芽と梅肉を!




こだわりの吸地は、命の一番出しと
アイナメのアラで上品に10分位で
さらりと取ったスープを半々に
混ぜたダブルスープとします!

アイナメの青葉の薫りがする
甘みと山蕗と山独活(やまうど)の
里山の青葉の香りとが、とても相性が
良いので、初夏を感じる大好き料理です。


鰹と昆布のみの出し汁での吸い地でも、
美味しいのですが、初夏のアイナメの薫り
のするスープを合わせることで、
一味も二味も違いが出ます!

海の旬の食材と里山の相性の良い食材を
組み合わせた、私らしい料理の
一品のような気がします。


このような料理が、私が目指してる
里山旬味の世界なんですが…

料理を、考案して構築していくのが
料理の醍醐味で楽しいものです。

料理の見た目だけでなく、
素材の持ち味を深く理解して
本質的に素材を生かすのが、
なかなか難しいものです…


5月6月の里山の青葉の香りがする山菜と
青葉の薫るアイナメの一時期しか成り立つ
ことが出来ない料理だと認識しています。

これからも、私の大切にしていきたい料理です!

是非、宿に残していきたい料理ですね…


九代目







  


Posted by 九代目 at 18:04Comments(0)旬暦(夏)